第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「あぁ、うん、私も確証はないんだけど…」
ユーリはローから痛いほどの視線を感じたので白状しはじめた。
白状というか隠し事をしてローを心配させるのは本意ではないので、フレバンスに近くなったら話そうとは思っていた。
数年前の出来事もあるので、できるだけローには正直に色々と話しておこうと思っていたのだ。
「この能力を過去に使っていた人たちの記録を見つけたんだけど、再生させる範囲が大きいと身体の負担もそれなりにかかるらしい」
「…負担だと?」
「うん。体調不良で寝込んだり、または意識を失ったり、能力の半分を失ったって書いてあった」
ユーリの言葉に、ローはやはり本人へのダメージがあるのかとため息を吐いた。
ローが使うROOMでさえ範囲が広ければ命を削る代物なのだから、街一つ再生するユーリの負担は同じくらいあるのではと推測していたのだ。
能力を失うのはどうでもいいが、ユーリの命に係わる事態だけは避けたかった。
「…どうせ止めろと言ってもするんだろ」
「もちろん!」
「…即答かよ」
ユーリの元気のいい回答にローは頭を抱えた。
こいつは一体自分の身体を何だと思っているんだ。
「命には関わらないから大丈夫だよ。だから意識失った時だけ回収してもらえれば、それだけでいいよ」
ユーリはローの心中を悟ったのか笑顔でそう付け加えた。
「あっ、もしくは体調崩したら看病して欲しいな!将来有望な医者から看病してもらえるなんて光栄極まりない。そしてお粥を作って欲しい」
プラス余計な事項を追加して言ってくるユーリにローの表情は呆れていた。
別に言われなくてもユーリが体調を崩せば看病の1つや2つするのは当たり前だろう。
あぁそうか、こいつは今まで体調崩したことがないから分からないのか。
馬鹿のなんとかではないが、ユーリならありえそうだ。
何時の間にか小さな雪だるまを作り、手に持って遊んでいるユーリを見て妙に納得した。
どちらかと言えば子供は風の子という言葉のほうがあってる気もするが。
ローは苦笑すると隣を歩くユーリの頭を乱暴に撫でてやり、フレバンスに近い最後の街についたので宿を探すことにした。