第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……霊なんておれが信じてると思うのか?」
「あぁ、うん、まぁそんな感じがしてたよ。取り合えず彼女を守る気があるなら、少しは気にしたら?」
「…気にするって何を」
「さぁ…取り合えずユーリが変になったら彼女を疑うんじゃなくてその他の要素を疑えばいいんじゃない?」
なんとも投げやりな言葉に、ローはだんだん疲れてきた。
さっきの妖精といいこの男といい、一体何がしたいんだ。
100歩譲って霊の存在を認めたとしても、何がどうなるのというのか。
まさかユーリが憑りつかれて世界でも滅亡させるのか。
まったく想像ができない。
「あぁ、分かったからこれ以上読書の邪魔をするな」
ローはこれ以上は付き合ってられるかと、持ってきた本を開いた。
もちろん男の言葉は一応気に留めておくが。
「そうだね。一応伝わったみたいだし、私はこれで失礼するよ。また向こうでも会うと思うしね」
ローはもう二度と来るなと思ったが、男に伝わっているのか伝わっていないのか、終始笑みを浮かべたままその場を去っていった。
(憑りつかれやすい…か)
例え憑りつかれたとしても、正気に戻させればいい。
なんとも簡単に考えているが、実際にはそうするしかないだろう。
まぁ本当にそんな日がくるとはあまり思っていないのだが。
そしてローは漸く静かになったと思い、再び読書に集中することにした。
集中はしていたのだが、少しだけあの男の言葉が気がかりだった。