第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「やぁ、こんな時間まで随分と熱心だね」
ローが席に戻るとテーブルを挟んで向かい側の席にカジノの男が座っていた。
ローは思いっきり眉をしかめたが、別の席にわざわざ移動するのも癪に障ったのでそのまま席についた。
「随分大量の本を持っていくみたいじゃないか。まかさフレバンスで図書館を開くわけでもあるまい」
「貰えるもんは遠慮なく貰っているだけだ」
「なるほど、流石海賊として名を馳せただけはあるね」
「……用件があるならさっさと言ったらどうだ」
ローはこれ以上読書の邪魔をされたくなかったので、さっさと話しを終わらせることにした。
わざわざここまで来るんだから、どうせ何か言いたいことでもあるのだろう。
「そうだね、君の読書の邪魔をしたら悪いし…」
ローの言葉にニコニコとしていた男だったが、表情を戻すと本来の目的を話し始めた。
「君の妻、ユーリのことなんだが」
男の言葉にローは少し反応した。
まさかまだハーレムに入れたいとか言ってくるんじゃねぇだろうな。
ありえそうな話にローは男を睨みつけた。
「彼女の心を見たんだけど、本当に真っ白だった。それはとても良いことなんだけどね、場合によってはそればかりじゃないんだ」
因みにハーレムは何時でも募集してるから、ユーリなら大歓迎だよ。
ローの心を勝手に読んだのか、余計な言葉を付けてきた。
ローはさっさと最後まで言えと視線で促すと、男は苦笑して話を続けた。
「憑りつかれやすい、とでも言うのだろうか。フレバンスは多くの亡霊が彷徨っていると聞く。だから彼女が心配になって君に伝えることにしたんだ。因みに君は限りなく黒に近い黒だから全く心配ないけどね」
男の言葉にローの眉間のシワが深くなった。
限りなく黒に近い黒ってそれはただの黒じゃねぇか。
何時かの占いばばぁといいこの男といい、一体何なんだとローは思っていた。