第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「…おれには必要ねぇ、他のやつに渡せよ」
ローは本を受け取る気はなかった。
そんな本に頼らなくてもやっていけるし、何よりもあの妖精からの贈り物というのが怪しくて仕方ない。
「……おっと予想していたパターンAが来たか。じゃぁこっちも手はず通りに…」
ローが断った瞬間妖精が何か訳の分からないことを言ってきた。
そして妖精の動向を監視していると、なんと妖精はローに本を投げつけてきたのだ。
「……おい、何がしてぇんだ」
ローは咄嗟に本を受け取ってしまい、妖精を睨みつけた。
「恩着せがましいかもしれないけどさ、彼女の思いを受け取ってあげてよ。何だかんだで君たちを巻き込んで悪かったと思ってるみたいだし」
妖精はヒラリと上空へ舞った。
どうやら贈り物を押し付けるだけ押し付けて帰るらしい。
「あ、なんなら君の連れのことを、もう忘れないようにその本に書いたら?」
「……なんでそれを知っている」
妖精の言葉にローは眉をひそめた。
いったい妖精界にはどのくらい2人の話が出回っているのか。
恐らくあの妖精が喋ったんだろうが、プライバシーの侵害にも程がある。
「まぁいいじゃない。じゃ、渡したからね!大切に使ってよ!」
そして妖精は最後にそう捨て台詞を吐くと、消えてしまった。
その場に残されたのはローと怪しい本だけであり、ローはそっとため息を吐いた。
本の表紙を見てみれば見慣れない文字が書いてあった。
確か知識とか知恵とかそんな感じの文字だろう。
そして裏面を見れば、何気に Trafalgar.Law と書いてあった。
なるほど、名前を刻んだ人しか使えないのか。以外にもその辺はしっかりしているようだった。
まぁこの本の信憑性は分からないが。
(ユーリは絵本を貰ったと言ってたが……)
ローは何故絵本なのか疑問に思っていたが、そういえば自分もユーリに絵本を渡したので、そんな感じかと勝手に納得していた。
そしてローは仕方なくその本と、後幾つか気になった本を手に取ると再び閲覧席に戻ることにした。