第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「ほら、折角の贈り物なんだから受け取ってよ」
ユーリが涙を堪えていると、妖精が早くとせかしてきた。
その言葉に誘われるようにユーリは本を受け取ると、周りを覆っていた光は消えた。
表紙に書いてある文字はやっぱりよく分からず、また本にしてはとても薄いものだった。
「あ、妖精の文字分からないんだっけ?その言葉の意味はね、私だけの物語、だよ」
「私だけの物語?」
「そう、その本には君の…今までの物語が書いてあるんだよ」
妖精の言葉にユーリは驚いたように本を捲ってみた。
そこには確かにそれらしいのが書いてあった、書いてあったのだが……
「…絵本?」
本にしては薄いと思っていたが、なるほど絵本仕様だったのか。
しかしなぜ……
「君の知り合い曰く、『どうせ日記とかそういう類が苦手そうだから、オート機能付きで勝手に書いてあげることにしましょう。ついでに阿保そうだから本みたいに難しいのじゃなくて絵本にしましょう』って言ってたよ」
「…ハハハ」
ユーリの心中を悟ったように妖精は教えてくれた。
確かに自慢ではないが日記等はあまり得意ではない。下手をすれば3日坊主どころか1日で終わる自信がある。
ユーリは妖精の言葉に乾いた笑みを浮かべると、その本を捲った。
絵本にしては随分完成度が高い気もしたが、自分がここで送ってきた話だと思うとなんとも恥ずかしい。