第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
豪華客船に乗って3日目の夜。
明日の朝には港に着くという事なので、二人は寝る前に色々準備をしていた。
そして準備が終ると当然のようにセックスに持ち込まれたが、数日前のユーリの訴えを気に留めてくれるのか妙に優しかった。
というか2日目の夜も優しかったのだが、ユーリはただの気まぐれと思っていただけに少し驚いてた。
そしてどうかこのまま優しいセックスが定着してくれることを密かに願いながら、ユーリは一足早く寝ることにした。
ローは今から図書館に行くようで、暫く帰ってこないだろう。
初日からそんな感じだったので、ユーリは特に気にしなかった。
「……?」
ローが図書館へ行き、ユーリが眠りに入って数時間後、何かに呼ばれるようにユーリは目を覚ました。
暫く暗い部屋の中をぼーっと見ていたのだが、ふと小さな光が現れた。
小さな光は次第に形になっていき、1つの本になった。
その本は、ユーリが初日に無くした本に似ていた。
「どうもー、君がユーリだね?」
ユーリは起き上がってその光っている本を手に取ろうとした瞬間、小さな妖精が現れた。
この世界は妖精が多いのかとユーリは疑問に思いながらゆっくり頷いた。
「この本は君がよく知る妖精からの贈り物だよ」
目の前の妖精の言葉にユーリは目を見張った。
ユーリの知っている妖精なんて1人しかいない。
「彼女は生きてるんですか?」
ユーリの考えが正しいなら、妖精は死んだはずだ。
でももし生きているというのなら、彼女に会いたかった。
「さぁ?それは僕にも分からない。僕はただ彼女からこれを預かっただけだから」
妖精のその言葉にユーリは肩を落とした。
分かってはいたが、未だに現実を受け入れられず、悲しかった。