第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「…どうしてローは名前を入れてもいいと思うの?」
この話題を掘り下げるか悩んだが、一応聞いておくことにした。
「特に意味はねぇよ」
「えっ、意味もなく入れるの!?」
「そんなもんだろ」
どうやらローは何も考えてないようだ。
まぁそんな感じもしていたが。
「いやいやそんな軽いものじゃないから。ちょっとピアス開けるとかそんな感じじゃないから」
「…そういえばおまえピアスしてねぇな」
「うわ、なんか自ら余計な話題を提供してしまった感が否めない」
ユーリの言葉にローは声を殺して笑うと、ユーリの耳に指を這わせた。
「開けなくていいからね?自慢じゃないが私は針系が大っ嫌いなんで、めっちゃ暴れますよ。死人が出るレベルで」
「…へぇ」
ユーリは身の危険、もとい耳の危険を感じたのでローの手を掴み外した。
あれだけ大怪我しておいて、針みたいなみみっちぃものが嫌いとは何とも変だが仕方ない。
なんかあのチクッっていう痛みが無理なのだ。よって注射も大嫌いだ。
風邪を引かないユーリには関係ないが。
「じゃぁ違う場所に開けるか」
「開けるわけないじゃん!人の話聞いてないよね!?」
ユーリは勘弁してくれと肩を落とした。
再生の力があるので、文字を入れられようが穴を開けられようが元に戻せるんだが、そこまでの過程が嫌すぎる。
まぁROOM内なら痛みはないかもしれないが、出てからどうするんだ。
まさかずっとROOMを張ってくれるわけでもないだろう。
「そういえば、何の本を貰うつもりなの?」
そしてこれ以上ローの興味を引くわけにもいかないので、ユーリは無理やり話題を変えた。
その不自然なまでの話題転換にローは含み笑いをすると、それ以上は追求せず彼女の質問に答えたのだった。