第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「はぁー。じゃぁ私も何か文字を入れようかな?ローがDEATHならALIVEとか?」
ユーリは漸く笑いを引っ込めると、自分の手の指を見て色々考えていた。
「随分単純だな」
「それを君が言うのかね」
「あぁ、じゃぁおれの名前を入れるか」
「うわー、そのうち言ってくると思ったよ!期待を裏切らないねほんとに!」
「分かってたなら話が早いな」
「早くねーよ!そんなことしてみろ、ローの身体にも私の名前刻んでやる」
「別にいいぞ」
「……は?」
ユーリはローを振り返って正気かよこいつと目で訴えた。
まさかのローの中2病説に引き続きドM説まで浮上するとは。
いやドM説は最初から浮上していたが、とにかくユーリは引いた。
「てめぇ、そこまで引くことねぇだろ」
「いやこれで引かなくて何で引くと言うんだ」
ユーリは視線を前に戻すと、背後に座る男の底知れぬ何かを感じてそっとため息をついた。
ローが一体どこまで本気で言ってるか分からない。
いや冗談だと思うが、朝起きたら勝手にユーリの指とかに名前を入れてそうで怖い。
だんだんユーリの手に負えない獣に進化していってるようで、飼いならせるか心配だ。
いや別に飼いならさなくても普通に暮らせればそれでいいのだが。
というか私が飼われそう。