第1章 前編 時の彼女と死の外科医
数週間後
「どうしよう、イラストも小説も読み尽くしてしまった」
ユーリは帰りの電車に揺られながら、燃え尽きていた。
ローとルフィは人気が高いため、イラストと小説合わせて数千件に及んでいた。
しかし、普段では発揮されない集中力を駆使して読破してしまったのだ。
因みに本編はあやふやにしか覚えてなかったので、再びアニメを見返していた。
話数が多過ぎて1話1話みてる余裕も気力もなかったので、ローが出てくる場面以外は早送りするという荒業に出たが。
結局、前より本編の流れは分かったが所々あやふやなのは変わらなかった。
ユーリは携帯を閉じると、窓から差し込む夕日を見ながら電車に揺られていた。
田舎町に唯一あるこの電車を、この時間帯に利用する人はあまりいない。
疎らに座っている人達は皆、携帯を触ってるか寝てるかユーリと同じようにぼんやりと窓の外を見ていた。
静かに電車に揺られながら夕日を見ていると、どうしても悲観的な気持ちになる。
普段は明るく何かと騒がしいユーリだが、1日が終わろうとするこの時間だけどうしても色々考えてしまうのだ。
ーーーこのままどこか遠くへ行きたいな。辛いこともなく、ただただ楽しいことだけがある世界に。きっとこの世界以外にも、見たことのない世界は沢山あるはず。
燃え尽きたからか普段以上に悲壮感を漂わせているユーリは、最寄り駅までまだ道のりは長いのでそっと目を閉じた。
ーーー夢でいいからローに会ってみたいな
意識が薄らいでいく中、そう願った。
ふと、夕日が揺れたような気がした。