第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
そして案内されたのはホテルだった。
まさかここにユーリがいるのかと思ったが彼女の姿は見当たらなかった。
「取り合えず適当に座りなよ」
そう言ってくる男が何を考えてるのか分からなかった。
「慣れ合うつもりはねぇ、さっさと用件を言え」
ローは鬼哭を出すと、男に向けた。
「嫌だな、俺みたいな一般人にそんなもの向けないでよ」
「ユーリはどこだ?」
「それが知りたいなら、酒の一杯でも付き合ったら?」
一般人と言うわりにはローを恐れている様子もない。
もう色々面倒になってきたので捕まえて拷問でもして吐かせようかと思ったが、この男の目の色と髪色が彼女に似ていたのでなんとなく気が引けた。
もしかしたら兄弟かとも思ったが、ユーリは違う次元の住人だからその可能性も低い。
また彼女は気づいた時からずっと一人だと言っていた。
ローは次第に痛くなってくる頭に手をやると、ドサっと男の向かいのソファに座った。
「はい、乾杯ー」
そして勝手に飲み始めた目の前の男に、ローは完全に毒気を抜かれた。
といっても何が入ってるか分からない酒に手を付ける気はなかったが、意外にも彼はそれを気にしないようだった。
ローに構うことなく勝手に色々話し始める目の前の男に、どことなくユーリに似ている何かを感じていた。
しかし似ていようが中性的な顔立ちだろうが、こいつは男だ。
ローは一瞬過った考えに頭を軽く振ると、深いため息をついた。