第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「ってこれじゃホストみたいじゃね?」
用意された黒を基調としたスーツを身に纏えば、完全にホストだった。
しかし用意して貰って文句を言うのもあれなので、ありがたく頂くことにした。
因みに戻りたいときはこれを飲めばいいと、ご丁寧に薬まで用意された。
「あと、その姿の間は能力使えないから気を付けてね」
そういったイワンコフの言葉に、ユーリはあることを思いついた。
「ということは海も平気なのか?」
「そうね、今のその姿だとただの一般人だし」
「……海楼石とか持ってたりしないですよね?」
ユーリの言葉にイワンコフは首を傾げた。
しかしユーリの仕返ししたい相手が能力者だと話すと、納得した。
裏取引にも従事している彼女はもちろん海楼石も持っていた。
そしてユーリに高いわよって言って部下に持ってこさせたのだ。
「じゃ、がんばってねぇ」
そう言ってイワンコフは再び大通りへ戻っていった。
「よし、行きますか」
ユーリは手に入れた海楼石を腰当たりに隠すと、一度深呼吸をして大通りに出ていったのだった。