第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ユーリは過去最高速度で走っていた。
なんとなくローが追っているような気がしたので、それはもう必死で走ったのだった。
そのお陰か分からないが、なんとかローを振り切って1人になることができた。
ユーリは裏路地に身を潜めると、大通りを歩いている人々を見ていた。
繁華街ということもあり、深夜にも関わらず大勢の人々で賑わっていた。
(はぁ、勢いでここまで来たけどどうするかなぁ)
ユーリは壁に背を向けて座り込むと、これから先のことを考えた。
考えるといっても本当にローのことが嫌いになったわけじゃないし、このまま行方をくらまそうとも思っていない。
つまり何がしたいのかと言うと。
(いつも私ばかり好き勝手されてるから、一泡吹かせてやりたい)
そう、日頃の恨みを晴らすため仕返しをしたいのだ。
しかしその方法が思いつかない。
いっそのことユーリが男になって襲ってやろうかと、なんとも恐ろしいことまで考え始めていた。
そのくらい今回の件を根に持ってるのだ。主に最後のあの失態で。
しかし男になると言っても、正直ローの方が絶対強いし、襲う方法も分からない。
いや、襲う方法は分かるが実際にやったことないからできる自信はまったくない。
そんなことで自信あるほうが問題なのだが、とにかく最初だけでもいいので驚かせてやりたかったのだ。
因みに襲うとはもちろんベットの上である。
(そもそも男になる為にはイワンコフの能力が必要だし、もっと現実的に考えないと)
ユーリはそんな都合よく男になれないのが分かっていたので、違う作戦を考え始めた。
「………ん?」
しかし神はユーリに面白いことをさせたいのか、大通りを歩いているイワンコフが目に入った。
「あぁ!?ちょっとすいませんー!」
ユーリは一瞬ポカンとしたが、慌てて彼女の後を追ったのだった。