第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
視界を塞がれてるユーリはローが部屋から出ていったと思っているだろう。
「ふっ…んん!…んー!」
ローを探しているのか、視界を塞がれているにもかかわらず辺りを見渡すような仕草をするユーリ。
ローは笑みを深めると音を立てることなく近くのイスに座った。
(…これだけしたら流石に嫌われてもおかしくねぇな。……まぁ今更か)
テーブルの上で頬杖をつき、ローは過去に己が行ってきた暴挙の数々を思い出していった。
寧ろそれを体験してよくローを好きになったなと、関心しつつあった。
今更手放す気なんてサラサラないが、日に日に増していく独占欲と嫉妬に愛想付かされるのも時間の問題な気がしてきた。
こんな自分を好きになったのが運命の付きだと思って諦めてもらうか、タフな精神力で特に気にせず受け止めるか。
なんとも後者な気がするが、そっちのほうが色々助かるのも事実だ。
そもそもローは元々執着心なんて皆無な男だった。
それを呼び起こしたのはユーリだから責任を取るのもユーリだと、なんとも自分勝手な結論にたどり着こうとしていた。
(今はこの状況を楽しむか。中々ないだろうからな)
ユーリからしたら迷惑極まりない状況だが、そんなこと知ったことではない。
下手したら本当にユーリのこと好きなのかと疑われるかもしれないが、これもローの愛情表現の内に入るのだ。
そして暫くの間ユーリの様子を眺めながら、楽しんでいたのだった。