第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
ガンッ!!
ポーラータング号に凄まじい音が鳴り響いたかと思うと、未だかつてないほど恐ろしい形相をしているキャプテンが現れた。
「おれが許可を出すまで誰も近づくな」
そしてそれだけ言い放つと、ユーリを引きずるように船長室へ消えていったのだった。
「おい、なんなんだあれ?」
「知らねぇよ。あんな怒ってるキャプテン見たことねぇし」
「ユーリ、大丈夫かな」
すごい勢いで閉められた扉を見ながら、クルー達はそう呟いたのだった。
今までは沈着冷静なキャプテン像だったローも、ユーリの前になるとそうでもないとクルー達は知っていた。
愛情、心配、過保護、怒り、悲しみ、笑い
まるで今まで封印してきた感情が一気に漏れ出るかのように、ここ最近でローの感情は豊かになったのだ。
その中でも愛情の次に激しいのが怒り、つまり嫉妬だ。
まだユーリが目を覚まし半月しか経ってないのだが、その半月でも十分に分かってしまった。
ユーリは見た通り鈍いから、きっとローの地雷を綺麗に踏んだのだろう。
常日頃から地雷すれすれをスキップしながら歩いているような奴だ。
そんなことをしていたら自滅するのも時間の問題だと思っていたのだ。
そして今回、本人にその気はなくても踏んでしまったなら仕方ない。
クルー達は無事に2人が仲直りすることを願いながら、どうしたものかと頭を悩ませたのだった。