第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「はぁーおまえ心狭すぎだろ」
シュライヤはローとは反対側の、ユーリの隣に腰を掛けると色々諦めたのか酒を頼んだ。
「……おい、そこに座る許可を出した覚えはないが」
「別に空いてるんだからどこに座ろうが俺の勝手だろうが」
睨みつけてくるローに対してシュライヤも睨みつけてやった。
二人の間で火花が散っているようだ。
(ひぃぃぃぃ!?なんで私を挟んで争うの!?てか二人とも仲悪かったっけ!?)
ユーリはそんな二人に挟まれて顔を引きつらせていた。
二人が争っている原因がユーリだとは気づいていない。
「お、これ上手そうだな。なんていう食べ物なんだ?」
「あ、これはですね……」
「ユーリ、酒が空いてるようだが次は何を飲むんだ?」
「え?えーっとじゃぁ」
「あーこれとか甘くて良いんじゃない?ユーリ甘いの好きだろ?」
「う、うん?そうだね、じゃぁ」
「てめぇ勝手に間に入ってくるんじゃねぇよ。ユーリは酒が強いから甘いので満足するわけねぇだろ」
「煩せぇな、そのくらい知ってるし。でも基本甘党だから飲むときは飲むんだよ」
「……なんでそんなことを知っている」
「あー!私これがいいな!」
何やら不穏な空気が流れ始めたので、ユーリは慌てて2人が言っている酒の中間くらいのを選んだ。
そういえばローにシュライヤと1年程一緒に過ごしていたのを話していない。
別に隠すつもりはないのだが、色々ありすぎて話すタイミングを完全に失ってしまったのだ。
勿論何かあったわけではないが、1年もいればそれなりにシュライヤの中でユーリに関する情報も増える。
それはきっとローが知るユーリの情報よりも多いかもしれない。
今まで気にしてなかったが、微妙にこの状況はやばいんじゃないだろうか。
ローの嫉妬深さは今一理解していないが、なんとなく第六感が今すぐこの場から逃げろと警報を鳴らしていた。