第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
シュライヤはまたもや偶然にユーリと同じ島に停泊していたのだ。
そしてこの広い街で出会える可能性が低いにも関わず出会ってしまうのは、運が良いのか悪いのか分からなかった。
「おまえ意識が戻ったのか!?」
驚いたように駆け寄ってきてユーリの無事を確かめるシュライヤの表情は、中々に凄かった。
その原因はローがユーリの無事を正直に伝えなかったことにあると、ユーリは知るはずもない。
慌てて今までのお礼と心配を掛けたことを謝罪するユーリにローの機嫌は急降下していった。
「はぁ、取り合えず良かった。てか病み上がりで酒なんてのんで大丈夫なのかよ?」
「そうですね。でもなんだかんだで半月は経つのでそろそろ大丈夫かと思いまして」
「は?」
「え?」
なんだか噛み合わない話に更に詳しく聞いてみると、ユーリが意識が戻ったのはここ最近ではなく半月ほど前らしい。
つい先日電話をしたときにはまだ意識が戻らないと言われたシュライヤは、この野郎とローを睨みつけた。
元々執着心の強そうな男だとは思っていたが、まさかここまでとは思ってなかったのだ。
「なんだ?」
そして涼しげな表情でしらを切るローの態度に、シュライヤの額には青筋が立っていた。
過去に一度でもこの男を助けるような真似をした自分を全力で止めに行きたい。
そうすればユーリもこんな男から解放されて、シュライヤにもチャンスが来たかもしれないと思わずそう考えてしまった。