第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「そうなると、おまえは何をするんだ?」
「え?……うーん、一回限定の修理屋?」
ローが人を治すのならユーリは物を直すのもいいかもしれない。人も治せるがそれはローがいるからわざわざユーリの出る幕でもないだろう。どうしても治せない病なら1度ユーリがみて、その後の継続的な治療はローがしてもいいかもしれない。
そうだそれがいいとユーリは良いこと思いついたと言っていたが、ローは微妙に不満だった。
「わざわざ店を開かなくても、薬の調合でも助手でもおれを手伝えばいいだろ」
趣味でやるなら別だが、ローが医者である以上金銭面では苦労はしないので極力ユーリには目の届く範囲にいてほしかった。
「薬の調合?いや、それは危険だ。私どの葉っぱも同じに見えるよ」
なんともユーリらしい回答だが、それなら助手で適当に手伝えとローは引かなかった。
「考えてみるんだ、私をコラサンだと。さぁ色々運んだりしているとどうなると思う?」
なんとも的確な例えに、流石のローも反論できなかった。
確かに似ているところもあるが、そこまでだろうか?……いや、十分にありえる。
「じゃぁもう家にいろ」
しかしローはユーリが一人で店を開くのを許可する気はなかった。
一人で店番でもしてみろ、どうせその内男共が群がってくるに決まっている。
「家にずっといたら退屈で死んでしまう。……そうなると毎日玄関先で死んだふりをすることになるけどいいんですか?」
「いいわけねぇだろ」
本気か冗談か分からないがそんなこと言ってくるユーリに、ローは本日何杯目かの酒を飲み干すと頭を悩ませた。
どうやっても一人で何かをしたいらしい。
このまま押し問答続けてもローの合意を得ることなく勝手に何か始めそうだ。