第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「行きたい場所?…うーん、行きたい場所…行きたい場所……」
どうやらユーリは特にやりたいことはないようだった。
ローはグラスに口づけながら、自分は何かやりたいことはないか考えた。
「ローはお医者さんになるの?」
ローが物思いに耽っているとユーリが尋ねてきた。
「さぁ、どうだろうな」
正直医者の夢はだいぶ前に捨てた気もする。
死の外科医という医者のようで医者ではない、今状況なら別にいいのだが。
街で普通に一般市民を診察している自分が想像つかない。
そもそもローは名の知れた海賊だ。
今更普通に医者なんて、そう簡単になれるものでもないだろう。
「それは、医者に興味はなくなったってこと?」
「そうじゃねェが、おれが一般市民を普通に診察しているのを想像できるか?」
「え?……た、たしかに」
自分で聞いておいてなんだが、少しくらい否定しろと内心思ってしまった。
「……てめェ」
「いやいや嘘です!でも、確かにローは名の知れた海賊だから最初は難しいかもしれないですね」
慌てて否定したが、問題は想像できるかではなくまた別の所にあった。
ユーリは少し考えると言葉を続けた。
「医者って患者との信頼関係で成り立つから、きっとローが本気で医者になるならそこに住んでる人も受け入れてくれると思うんです」
この時代に医者が足りているとは思えない。だから小さな島の町医者なんてのもいいんじゃないだろうか。
ローは医療に関してかなり腕が立つし、プライドもあるのでちゃんと治してくれるだろう。
ローが信頼できるのはユーリが一番よく知っているので、きっと上手くやれると思ったのだ。