第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
「……ユーリを抱きてぇんだが」
少し考える素振りをして言葉を発したローに、ユーリは固まった。
流石のユーリも今抱きしてめるじゃんとは言わなかった。そのくらいは学習した自分を褒めてやりたいが、そんなことはどうでもよかった。
今まで面と向かって許可を求められたことがあっただろうか?
ユーリは少し混乱した。
(あれ、今までこんなこと聞かれたことあったっけ?いつも突然始まって訳の分からないまま終わっていたような。っは!遂に私にも選ぶ権利が与えられたのか!?そうかこれが恋人の特権てことか!じゃぁ断るっていう選択肢もあるんだな!)
「今日は寝よ「まさか断るんじゃねェだろうな?」
ユーリの考えてることが最近分かりつつあるローは、間一髪与えずその選択肢を消してやった。
一度スイッチが入った以上、それなりに手加減はするがユーリを抱かないという選択肢はなかった。
「え!?さっきの問いかけは問いかけのように見せかけての決定事項!?」
「耳元で騒ぐなうるせぇ」
「いやほら、お互い病み上がりだし、身体は大事にしないと」
「……今までのおまえの行動を顧みてよくそんな言葉が出てくるな」
「うっ……その節はたいへんご心配を」
「じゃぁいいってことだな」
ユーリの言葉を聞くまでもなくローはユーリに覆いかぶさると、そのオレンジ色の瞳を見下ろした。
「いやいやよくない!私の心の準備が非常によくない!」
ユーリは慌てた。
何しろ数年ぶりだ、色々動揺しても仕方ないだろう。
まずはお互い茶でも飲んでリラックスしようと言ってきそうなユーリにローはため息を吐くと、その煩い唇を塞いだ。