第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「………悪かった」
ユーリが再び発生した沈黙にどうしようかと考えを巡らせていると、ローがいきなり謝罪をしてきた。
「え!?どうした!?」
ローが謝罪をするなんて今まであっただろうか。思わず声を上げるユーリの目は今にも飛び出しそうだった。
「てめぇ」
そして再び機嫌が急降下していくロー。
ユーリは慌てて表情を元に戻すと、詳しく話を聞いた。
謝罪の内容は、ユーリの抱え込んでいるものに気づけなかったこと、知らない女と関係を持ったこと、能力を使われたとはいえユーリのことを忘れてしまったこと、そして危うくユーリを殺してしまうところだったことだ。
神妙な顔つきで話していくローに、ユーリはそんなことは気にしなくていいとあっさりしていた。
逆にローに色々気苦労を掛けたと、そのことを謝罪してきた。
それこそ気にするなと言いたかったが、このままだと会話がエンドレスしそうだったので止めた。
ユーリの自分の身体を顧みない性格は、すぐにどうにかできるものでもなさそうだった。
ローは深いため息を吐いた。
「……取り合えずこれを食べろ」
そう言ってローが差し出してきたのは悪魔の実だった。
「どうしたのこれ?」
ユーリは起き上がると、真っ白くて綺麗な悪魔の実を興味深そうに見ていた。
「珀鉛病の治療法だけどうしても見つからなかった。だから再生の力があるこの実を食べさせた方が早いと思って探してきた」
なんでもローが持っている悪魔の実はどんなものでも再生できる能力らしい。
ユーリを助けるために費やした2年間の間に見つけてきたのだ。
最初は悪魔の実ならなんでもいいかと思っていたが、それでローが治らなかったのを思い出し、わざわざ探してきたのだ。
もうトキトキの能力者でなくなった彼女なら食べても大丈夫だろう。