第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「ねぇ、ロー。私たち結構前から知り合いだったんだね」
「…そうだな。未だに信じらねェが」
「なんで忘れてたんだろう。もしかして幼いながらに痴呆症が!?」
「おい、それを言うならおれもそうなるだろうが」
「あぁ~うん、それもそうか。まぁあの頃はお互い大変だったしね」
二人は走り続けた。
一向に見えない出口に不安な気持ちもあるが、今は1人じゃないので怖くなかった。
幼かった姿は、いつの間にか大人の姿に戻っていた。
「洞窟長いなぁ、どこに続いてるんだろう」
「さぁな」
「あの人、満足してくれたのかな?もししてなかったら、ここでお別れだったり…」
「……」
ユーリの言葉にローは掴んでいる手に力を込めた。
ユーリもローの気持ちが伝わったようで、しっかりと握り返した。
例えこの先に続いているのが地獄だったとしても、二人は離れるつもりはなかった。
そして暫く走り続けると漸く出口が見えてきた。
二人が洞窟を抜けると、そこは月夜に照らされた船の上だった。
その船は、二人がよく知っているポーラータング号だった。