第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「………そうですか」
今まで散々死亡フラグを立てていたので、特段気にはならなかった。
寧ろもういつ死んでもいいとさえ思っていた。
「なんでそんなやる気がないのよ。言っておくけどあなたの役目は、誰かがワンピースを手に入れれるようにサポートすることだからね!手を抜いたら許さないわよ」
「誰かって誰ですか。ワンピースなんて私が関わってなくても、誰かが勝手に手に入れると思うのですが」
「誰を導くかはあなたが決めるのよ。ワンピースに近づく条件の中にはトキトキの能力があるから。勝手にワンピースを手に入れることはできないわ」
「何それ面倒くさい」
妖精曰く、ロジャーがワンピースを手に入れた後、次の世代でトキトキの能力を扱えそうな人が見つからず焦っていたらしい。
1000人に1人の割合で成功すればいいほうなのに、トキトキの実を食べれる素質のありそうな人がまったくいなかったのだ。
そして歴史を繰り返すためにも少しでも早く適任者を用意する必要がある。
だから面倒であるが、別次元から連れてきたのだ。
まぁ妖精曰くユーリが呼ばれたのはそれだけじゃないようだが、なんとも迷惑極まりない。
ちなみにロジャーはトキトキの能力者ではなく、その仲間にトキトキの実を食べた人がいたそうだ。
ユーリはなんとも重い使命に思わず溜め息を吐いた。
「特に期限はないけど、あえて言うならあなたが死ぬまでかしら?いつまでも邪な考えでニヤニヤしてるんじゃなくて、ちゃんとしてよね」
「…いや、なんか、すみません」
指摘された事項が恥ずかしかった為、ユーリは思わず謝罪の言葉を口にした。
そしてそんなユーリの言葉に満足したのか妖精は再び姿を消した。
「……」
なんとも不服な終わり方にユーリは微妙な気持ちになり、暫く彼女が消えた先を眺めていた。
……そんな二人の話を聞いてた人がいたが、ユーリが気づくことはなかった。