第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
(えええええ!?)
ユーリが驚き声を上げようとするが、すぐに水の中に入ったのか声がでなかった。
「…っーー!」
ふと、ユーリを呼ぶ声が聞こえた。
荒れる海に押し流されて苦しくて仕方ない。
何とか海面に顔を出して、声のした方を見る。
ユーリに向かって叫んでいる少年は、ローとよく似ていた。
ユーリは咄嗟に助けを求めようとしたが嵐の海は凄まじく、そう時間が経たない内に身体が沈んでいった。
そしてそんなユーリを助けようと、少年も海に飛び込んだのが見えた瞬間、再び意識が暗転していった。
「……っ!?」
ユーリが次に目を覚ますと、そこはゴミの山だった。
一瞬状況が理解できなかったが、この場所は幼少期に過ごした所だと気づくのに時間は掛からなかった。
漂う悪臭と冷えた空気にユーリは身体を震わせた。
夢なのか現実なのか分からない。
ただ、感じる空腹感も悪臭も寒気も夢にしてはリアル過ぎると思った。
ユーリは冷える身体を震わせると部屋の隅にうずくまり、永遠とも思われるこの時間をじっと耐え続けた。