第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
それから暫く少女が姿を現すことはなく、最後に会ったのはフレバンスが滅んだ日だった。
燃え盛る屋敷の前で呆然としていると、突然あの少女は現れた。
ローも少女も暫く現状を把握できなかったが、先にローが我に返ると少女の手を引きこの街から逃げ出した。
全てを失った少年は、この少女だけでも守りたかったのだ。
それから二人は死体の山が積んである船に乗り込むと街を離れることができた。
漂う悪臭に何度も吐いたが、それでも何とか2人で耐え続けていた。
しかし不幸は重なるもので、乗っていた船が嵐に見舞われた。
強い衝撃音と共に船に穴が開き、ロー達がいた死体の部屋も水没していった。
ローは少女の手を消して離さなかった。
だけど、岩礁に乗り上げたのか、船が大きく揺れ動くと……少女の身体は海に投げ落とされた。