第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ローが目を覚ますと、真っ白い夢の中だった。
そして最近恒例になっている少女を探してみると、相変わらずボロボロの姿だった。
ローは食べ物を渡し、軽く彼女を診察して治療をする。それが最近の流れだった。
お医者さんみたいだとはしゃぐ少女に、おれは将来医者になる男だと言った。
そんな言葉にますます尊敬の眼差しで見てくる少女に、嫌な気分はしなかった。
最初は頭のおかしい奴だと思っていたが、会話は割と普通に出来るようだった。
だから少女が偶に変なことを言うのが余計に理解できなかったのだ。
しかしそれを問いただしたところで少女もよく分かっていないので、最近は諦めつつあった。
一度少女から一切目を離すまいと意気込んでいた時もあったが、何か見えない力が働いているのか、ことごとく邪魔が入り少女は消えてしまった。
少女は一体どこへ帰っているのだろうか。
その疑問が消えることはなかった。
そして数日後、ローは再び目の前に現れたボロボロの少女に眉を顰めると、いつも通り食事を与えようとした。
しかし今日は少し何時もと違った。
彼女の手には白い帽子が握られていた。
ボロボロの姿に似合わないその綺麗な帽子をローは不思議そうな顔で見ていると、彼女はそっとローに差し出した。
意味が分からず理由を聞いてみると、何時もの食べ物のお礼と言っていた。
少女の周りにあるもので、唯一綺麗なものがこれしかなかったと。
ローはそんなことは気にしなくていいといったが、少女が中々引かなかったので受け取ることにした。
黒い斑点模様のある手触りの良いその帽子を、顔には出さなかったがローは気に入った。
そしてお礼を言おうと少女に視線を向けると、少女はまた姿を消していた。