第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
それからはただひたすらユーリの命を繋ぎとめる治療を続けていった。
そもそも心臓がないのに動けていた原理が分からない。
もうユーリは人と呼べるものではないかもしれない。
心臓を移植したところで助からないかもしれない。
そんな不安が消えることがなかったが、手術を始めてから一週間後、奇跡的にもユーリに与えた心臓は動きだした。
静かに鳴り響き始めた電子音に、ローは全身の力が抜ける感覚がした。
しかし戦いはここからだ。
生死を彷徨っているユーリは、いつ死んでもおかしくない。
今までもほとんど寝ずに治療を続けていたローだったが、そこから更に一週間ユーリにつきっきりだった。
目の下の隈が過去最高に濃くなっていく船長をクルー達は心配した。
しかし今は何を言っても無駄だと思い、出来るだけ船長の手伝いをすることにした。
皆も、ユーリの復活を願っていた。