第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ーーピッーーピッーーピッ
静かな電子音が響く中、ローはユーリの手を握りずっと傍にいた。
ユーリの応急処置が終わったころ、ハートの海賊団がやってきた。
ローはユーリを抱え上げるとシュライヤに軽く礼を言って自分の船に戻った。
そして手術台に乗せると、そこから本格的に治療を始めたのだ。
手術は1週間に渡って行われた。
まず心臓のないユーリにこの2年間で用意した人工の心臓を移植した。
本当は能力を使って本物の心臓を入れてもよかったが、そんな事したらユーリは絶対気にするだろうし、ローもユーリの体内に知らない奴のものがあるのは気に入らなかった。
また取ってきた心臓がユーリに適合するとは限らない。
だから人工のを作ることにしたのだ。
と言っても、本物だろうが人工だかろうがユーリに合わないものを作っても意味がない。
フレバンスは心臓の移植手術にも長けていたのでその知識は十分にあったが、ユーリの体質のサンプルがない以上困難を極めていた。
そしてその結果大量の人工心臓ができあがってしまった。
これだけ作って合わなければ、100個だろうが1000個だろうが能力を使って生きてる人間から心臓を奪うつもりでいた。
死の外科医と呼ばれているくらいなので、非道と言われようがどうでもよかった。
流石にここまできて無理だったら、ユーリが気にするとか、自分が気に入らないとか考えてる場合ではない。
ユーリさえ生きてくれれば、それだけでよかった。
そして一か八かの掛けに、天はローに味方したのか、ユーリに合うものを作っていたようだった。