第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「……っ」
ふと、彼女が目を開いた。
ローは息を呑んだ。彼女の瞳は虚ろで何も映してなかった。
でも、ローのことは何とか認識できたのか、ゆっくりと視線を合わせてきた。
そしてローから流れる血を見て顔を顰めると、そっとローの身体に手を這わせた。
みるみる消えていく傷跡。
「…ユーリ…?」
右手に付けていた虹色の紐が切れて、静かに落ちていった。
ユーリが最後に使った能力は、ローの記憶の欠片を完全に繋ぎ合わせたのだ。
「何してるんだ!!やめろ!!」
ローは咄嗟にユーリの手を掴み止めたが、彼女は満足したのか、今度こそ完全にその瞳を閉じた。