第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリが会場に戻ると、二人は誓いを立てている最中だった。
辺りを見渡してもシュライヤの姿は見えない。
ユーリはローの心臓も心配だったがシュライヤならきっと上手くやってくれると思い、使用人の恰好を利用して新郎新婦に近づいた。
極力不自然じゃないよう歩いていくが、吐きそうなくらい落ち着かなかった。
嫌な汗が流れ落ちる。
能力者でもないユーリがこの厳戒態勢の中、リデルから指輪を奪うのは不可能だ。
ましてや近づくことすらできないだろう。
でも、やるしかなかった。
少しでもいい、騒ぎになって、ローが記憶が戻って、逃げてくれれば……
そんなことあり得ないのに、ユーリの頭はもう何も考えられなかった。
無力なユーリは最早奇跡を祈るしかない。
ーーー私の命と引き換えにローが助かるならいくらでも差し出すから。だから、どうか彼を助けてください。
ユーリは限界まで近づくと駆け出した。
目の前にはローに指輪をつけようとしているリデルがいる。
ざわつく会場、湧き上がる悲鳴、鳴り響く銃声。
不審者を捕らえるべく身を乗り出した何人もの海兵が、ユーリに襲い掛かった。