第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ーーーーそれを言うなら、おれは海賊で、ガラが悪く目つきも悪い、死の外科医と周りから恐れられ、女が喜ぶ気の利いたこともしてやれねぇ。
そんなおれを、おまえは嫌なのか?
「……っ」
ユーリは聞こえるはずのないローの声に辺りを見渡した。
例えそれが高熱からくる幻聴だったとしても、ローが必死にユーリに伝えようとしている言葉のように思えた。
そんなの嫌なわけない。ユーリはローだから好きになったのだ。
きっとそれは、ローも同じことをユーリに伝えるだろう。
(あぁ、そうだ…何を考えてるんだ私は。もう、後悔したくないと決めたじゃないか)
ユーリはゆっくり一呼吸すると、辺りが暗くなったのを確認し、一度その場から離れた。