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時の恋人【ONE PIECE】

第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医







そして次の日、結局打開策が思いつかないまま結婚式が始まった。

王宮内で一番広い広間で始まった披露宴には、島中の人々が集まっていた。
王宮内の広さとは思えないその場所は、煌びやかな装飾品や宝石が散りばめられていた。
もちろん警備も厳重で堂々と姿を見せているわけではないが、あちこちでこちらを見張っている人間を見かけた。
恐らく相当な数の警備員という名の海軍がこの場に潜んでいるのだろう。

下手をすれば能力者までいそうだ。

ユーリは落ち着かない表情で会場の壁を背に立っていた。
早まるはずの鼓動はもう感じられないが、ドクドクと何かが脈打つ感覚に襲われていた。

ユーリはなくなった心臓辺りに手を当てると、何度も深呼吸をして落ち着かせた。

目の前には派手な螺旋階段から、ローとリデルが降りてくるのが見えた。
純白のドレスを身に着けている彼女に、正装のローはまさにお似合いの美男美女カップルだ。

それに比べて自分なんて、ただの一般人で、地位も力もなく、派手な外見とは正反対の容姿で、背もそんな高くないし、病弱で、死にかけだ。


次々と浮かび上がる悲観的な思考に、ユーリは思わず手を握り締めた。


周りにはローの姿を見てうっとりとしている女性たちが、何やらヒソヒソと話している。
それはリデルを羨ましがり、嫉妬するものばかりで、ユーリは心が痛んだ。

改めてローの凄さを知り、ユーリはますます自信を無くしたのだ。

本当にローは私でいいのだろうか?

昔は近くにいたローが、今となっては随分遠くに感じてしまう。
ユーリは熱に浮かされた表情で、目の前の光景を見ていた。






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