第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは驚き固まっていたが、シュライヤはさっさと自分の席に戻ると再び食事を再開した。
そんなシュライヤを暫く見ていたユーリだが、声を掛けるべきか迷っていた。
ユーリだとは気づいていないので、どうしたものかと考えていたのだ。
実はこちらの世界に戻ってきてすぐ、シュライヤに助けを求めようかすごく迷っていた。
2年前に渡された連絡先はまだ持っていたので、連絡を取ろうと思えば取ることができた。
だが、また彼に迷惑を掛けてしまっていいものかと悩んでいたのだ。
そしてそうこう考えているうちにハートの海賊団と出会ったので、シュライヤには連絡を取らないと決めていた。
彼には3年前のこともあるので、これ以上の迷惑は掛けるべきではないと思ったのだ。
(取り合えずお礼だけでも言って、今回は自分でなんとかしよう)
しかし運命か偶然か分からないが、再び2人は出会ってしまった。
シュライヤが手伝ってくれればローを取り戻せる可能性も高まるが、今回は世界政府相手だ。
流石にこれ以上ユーリ達のゴタゴタに巻き込むのは申し訳なかった。
「……おい」
そしてユーリが意を決して話しかけようと視線を向けると、いつの間にかシュライヤが目の前にいた。
「…っ!?な、なんでしょう?」
ユーリは驚きのあまり少し後ずさったが、何とか普通に対応した。
そんなユーリをシュライヤは探るような目で暫く見ていると、突如驚いたように目を見開いた。
「おまえ、ユーリか?」
彼から発せられた言葉に、ユーリは目を見開き固まる。
今まで決して誰もユーリだと気づかなかったのに、運がいいのか悪いのか、彼には気づかれてしまった。