第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは訪れた人達の対応に追われていた。
運ばれる料理や酒はすぐになくなり、どんなに運ぼうがまったくキリがない。
中には酒癖の悪い人もいて余計に手間取らされてしまい、作業が更に遅くなる。
そしてそれに小言も言われ、なんだかんだで3時間が経過しておりユーリの体力も限界に来ようとしていた。
昼過ぎから始まりそろそろ日も暮れようとした時間になっても客が帰る気配はなく、ユーリはふらつく足取りで厨房と庭を何度も往復し続けていた。
そして料理が限界まで乗せられた重い皿を何とか落とさずにテーブルに置くと、ふと前方に気になるものを見つけた。
用意されたテーブルの前のイスに腰かけ、豪快に食事をしている男性が何となく気になり暫く呆然と見ていた。
そのピンク色の髪形はどこかで身に覚えがあったのだ。
「おい嬢ちゃん、酒がないから持ってきてくれよ」
「…っ、あ、はい、分かりました」
「…ん?よく見たら結構な美人じゃねーか!丁度暇してたからこっち来いよ!」
「えぇ?それはちょっと…」
ユーリは手を掴まれグイグイと引っ張ってくる酔っ払いに勘弁してくれとため息を吐いた。
数年前なら能力使ってすぐ撃退できたが、今ユーリの身を守るものは何もなかった。
そして下品な笑みを浮かべる男性の膝の上に乗せられようとしたところで、強い風が吹いた。
「…そのへんにしておけ」
一瞬で遥か遠くに飛ばされた男を、唖然とした表情で見ていると、目の前にあのピンク色の髪の男がいた。
「…え!?」
(シュ、シュライヤ!?)
ユーリは驚き声を失った。
身に覚えがあると思っていたその男は、数年前にお世話になったシュライヤだったのだ。