第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「…あっ……えっと……違います。この肌の色を見てそう思ったのでしょうか?……これは、例の病と似ていますが……違う病気です」
ユーリは完全に無視されていた状況に焦っていたが、いきなり話しかけられればそれはそれで焦った。
そしてなんとなく嘘をついてしまった。
特に深い理由はないが、今は珀鉛病の話を掘り下げてる場合ではない。
「……そうか」
案の定興味を無くしたのか腕を離し立ち去ろうとするロー。
ユーリは慌てて声を掛けようとした。
「ちょっと!ロー!」
すると突然聞こえてきた声。
振り返ると、こちらへ向かってくるリデルが見えた。
ユーリは一瞬ヒヤリとしたが、こちらを気にすることなくローに抱きつく彼女に、気づいている様子はなかった。
そのことに安堵する反面、目の前に繰り広げられる光景に軽く眩暈を覚えていると突然リデルから鋭い視線を向けられた。
「使用人ごときがこんな時間帯までうろついて何をしているの?早く私たちの前から消えてちょうだい」
冷たく言い放ってくる彼女にユーリはやれやれと思い、軽く謝罪すると身を翻し部屋へ戻っていった。
リデルが来たので、これ以上話すことはできない。
せっかくのチャンスだったが、焦って全てを台無しにするわけにもいかないので、仕方なくこの場を立ち去った。