第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「……はぁ」
ユーリは居心地の悪くなった部屋をそっと抜け出した。
消灯時間まで少ししかないが、ギリギリまであの部屋に戻りたくなくて偶にこうして抜け出すことがあった。
1週間経ってもローの姿が見えず、ユーリは本当にここにいるのかだんだん不安になってきた。
しかし考えた所で他に心当たりもないので、暇を見ては彼の姿を探すしかなかった。
ユーリは熱に浮かされる頭でぼんやりと廊下を歩いていた。
廊下は明かりが灯っているが、薄暗かった。
王宮の者は就寝の準備をしているのか辺りは静まり返っており、ユーリの微かな足音だけが響いていた。
だから、その足跡が2つに増えた時すぐに気づいた。
前方から聞こえてくる足跡に、ユーリは見つかったら小言を言われそうだと思い引き返そうとした。
「……っ」
しかし身を翻そうとしたとき、暗闇の中から見えた姿にユーリは目を疑った。
目の前に姿を現したのは、ずっと探していたローだった。
彼は静かにこちらへ向かって歩いてきた。