第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「ユーリちゃん!探してたんだぜ。だいぶ冷えただろ?これでも食べて温まってくれ」
ユーリが戻るや否や、サンジがスープを持ってきてくれた。
ユーリはお礼を言うと皆から少し離れた場所に腰を下ろし、ゆっくりとスープを飲んだ。
スープの温かさと美味しさのおかげで、漸く張り詰めていた空気を緩めることができた。
ユーリはゆっくりと辺りを見渡した。
ローとスモーカーが何か話している姿が見え、ルフィ達が騒いでる姿が見え、改めてこの世界が現実のものだと実感し始めた。
そしてユーリは、これからどうしようかと、ぼんやり考えていた。
「……おい」
スープも飲み終わり暫くぼーっとしてると、再びローがこちらへやってきた。
ユーリが慌てて声のした方を振り返ると、いつになく眉間にしわを寄せているローがこちらを見ていた。
「わ、私、何かしましたでしょうか?」
無言でユーリを見据えるローに、何事かと思い当たる節を探した。
(も、もしかしてコートが汚れていたとか!?だからあれほどクリーニングに出したいと言ってたのに!いや、言ってないけど)
ローの剣幕に押され動揺するユーリは一人ノリツッコミをしていた。
ローはそんなあたふたとするユーリを見てため息を吐くと、徐にユーリの前に座り込んで足を掴んだ。
「…へっ?」
「歩き方がおかしいと思ってコートを見てみれば、汚れてねぇし」
「…っえ?」
(汚れていないならいいのでは?)
咄嗟にそう口を開こうとしたが、ローの視線が痛かったので黙った。
「麦わら屋の船医にでも頼むかと思ってれば、何時までもぼーっとしやがって」
「……」
ユーリはここに来て、漸くローが凍傷のことを言っているのだと気づいた。
よくよく見ればローは手に何かを持っており、まさかの治療イベントにユーリは動揺のあまりフリーズした。