第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
煌びやかな調度品が並ぶ、広々とした部屋にローはいた。
身体に触れる高級感あふれるベットは、大の大人が何人でも横になれる広さがあった。
シーツに手を滑らせると、その心地よい肌触りに思わず何度も触れたくなる。
そんな場所でローは漆黒の髪の女性を組み伏せていた。
目の前の愛しい彼女の名前を呼び、何度も抱いていた。
経緯はあまり覚えてないが、扉の向こうに2年間閉じ込められていた彼女を取り戻すことができた。
思いを通わせた以上これから先ゆっくり愛を育めばいい、そう思っていた。
彼女の背後に世界政府がいたのは驚いたが、別に邪魔をしてこないならどうでもよかった。
行為が終わり眠る彼女の髪を撫でていたローは、ぼんやりとそう考えていた。
……だけど、どうしてだろか。
ローの心は、ぽっかりと穴が開いたような……そんな感覚だった。
ローの愛した彼女は、こんなに静かな感じだっただろうか。
彼女の香りは、こんなきつい香水だっただろうか。
そもそも彼女はーーー
何度も湧き上がる疑問にローは答えを見つけることができなかった。
そしてモヤモヤする気持ちを忘れるかのように眠りに入っていく。
これ以上考えても仕方なかった。
ローはここ最近夢の中で会う、白金の髪を持つ女性が気になっていた。
いつも泣いている彼女は、ローが近づくとすぐに消えてしまう。
彼女に泣いている理由を聞きたくても、目すら合わせることができない。
何となく、そんな彼女が気になっていた。