第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
そして数分後
自慢じゃないがユーリはまったく仕事の説明が頭に入ってなかったので、さっそく今日から仕事という事でちょっと焦っていた。
そして体調が悪いせいもあるが中々に悲惨な状況だったので、夜になると同室の同僚達に嫌味を言われてしまった。
使用人ごときに1人一部屋は与えられないのだろう。
10人くらい入る大部屋でこれから他の使用人と一緒に過ごすのかと思うと、なんともげんなりしたのだ。
同室の彼女たちも中々にあたりの強い人ばかりのようなので、仲良くなれる自信もなかった。
夜遅くまでお喋りに夢中な彼女たちの会話が自然と入ってきて、ユーリはすぐに寝れなさそうだとため息を吐いた。
嫌でも入ってくる会話は、美容や恋愛、美味しいカフェなど普通の会話もあったが、今この国で噂になっているローの話も出てきた。
ユーリは一瞬ドキリとしてその会話に耳を傾けると、彼女たちはローを見たことがあるのかどれもリデルを羨ましがる内容だった。
今回使用人になった理由も、ローを近くで見てみたいという下心ではいった者も少なくないようだ。
ユーリは改めてローの人気を知り、なんだかすごい人と知り合いだったんだなとしみじみ思っていた。
知り合いというか思いを通わせた仲なのだが、今の変わり果てた姿のユーリは何気に自信を無くしていたので後ろ向きな考えだった。
といっても以前のユーリもローと釣り合うとはあまり思ってなかったので、余計に彼女を落ち込ませたのだ。
そんなことローに言えば怒られそうだが、そう考えられずにはいられなかった。
今のユーリの雪のような白さも、十分魅力的で美しいのだが、それに彼女が気づくことはなかった。
そしてユーリは疲れた身体を固いベットに横たえると、無理矢理目を閉じて眠りに入ったのだった。
今日はローに会えなかった。