第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「にしても随分変わり果てたみたいだけど、大丈夫か?」
ユーリからローの話を聞くと、すぐにクルー達は船を出港させた。
リデルが向かった先を彼らに伝えると、恐らく自分が拠点とする島に戻っただろうと推測してくれた。
リデルとそれなりに交流のあった彼らは、彼女が拠点とする島を知っていた。
世界政府の敷地内に逃げられたらどうしようかと思っていたユーリは取り合えず安堵した。
「私は全然大丈夫です。それより皆さんを巻き込んでしまって申し訳ないです」
ユーリはローの仲間と合流できたのは大変心強かったが、今の無力なユーリでは彼らを守ることができない。
そんな彼らを危険な目にあわせるのは正直辛かった。
しかし彼らは船長を助けるのは当たり前だし、ユーリも守るのは当たり前だと当然のように答えた。
ローがユーリのことを彼らにどう伝えたかは知らないが、彼らの言葉にユーリは思わず泣きそうになった。
「結構離されたみたいで追い付くまでまだ時間がかかるから、ユーリさんは今のうちに休んでください」
ユーリは平気なふりをしていたが、シャチが何かに気づいたようで引きづられるように船内に連れていかれた。
そんな二人を不思議そうに見ているクルー達。
実はユーリは白髪になって以降、高熱とまではいかないが熱を出していた。
白い肌の彼女に赤みの掛かる頬は目だったようで、気づかれてしまったのだ。
何から何まですみませんと謝るユーリに、シャチは気にするなと笑顔で答えていた。
一応医者の下で過ごしていただけあって、それなりに相手の顔色とか分かるようになっていたのだ。
もちろん他のクルー達も遅かれ早かれ気づいていただろう。
今回はユーリの一番近くにシャチがいたので、誰よりも先に気づいたのだ。