第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは長い洞窟から抜け出ると、見たことのない島の海岸に出た。
恐らくこの地点で次元の扉を開いたのだろう。
ユーリは慌てて海を見渡すと、はるか前方に海軍の船が見えた。
恐らくローが乗っているのはあの船なのだろう。
ユーリは他に船がないか見渡そうとしたが、突如身体に激痛が走った。
「……っう…!」
ユーリはその場に倒れ込み息を荒げた。
そして砂浜に散らばった長い白金の髪が視界に入ると、信じられない現象が起きた。
「……なっ…!?」
ユーリの髪は真っ白な白髪に染まっていった。
そして皮膚も白く染まっていき、恐らく瞳も薄い灰色に変わり果てたかもしれない。
現実に戻った瞬間、今まで止まっていた珀鉛病が一気に進行したのだ。
ユーリは激痛に耐えながら、変わり果てた自分の姿を驚いた表情で見ていた。
(いや、姿が少しでも変わるなら好都合だ。彼女は私が死んだと思っているから)
ユーリは徐々に痛みが治まっていってるのに気づくと、砂浜に落ちていた錆びたナイフを手に取った。
バサリッ
ユーリの持ったナイフは、その美しい白髪を切り裂いた。
錆びていた為に何度も引っかかったが、何とか短く切ることができた。
ギザギザに切られた髪に、ボロボロの服。
ユーリは幼少期の自分を思い出し、思わず笑ってしまった。
こんな大変な時期にあの頃の悪夢を思い出すとは。
あの頃のユーリは本当に悲惨な状態だった。
施設の人が保護してくれなければ、恐らく命はなかっただろう。
「さぁ、行こう。もう…後悔しない為に」
そしてユーリは痛みが完全に引くと、船を探すため再び駆け出したのだ。