第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは鎖で身体を拘束され地面に転がされた。
必死でリデルを説得する言葉も、彼女に届くことはなかった。
そしてあまりにも煩いものだから、布のようなもので口も封じられた。
リデルは気を失ったローを従者達に運ばせると、ユーリの前に立った。
「彼の心配はしなくていいわ。私が幸せにしてあげるから」
何か言っているユーリだが、その言葉は発せられることはなかった。
確かにローの幸せを望んだが、こんな結末は望んでいない。
ローが本気で愛するなら構わないが、無理やり記憶を書き換えられてローの気持ちはどうなるのだ。
ユーリは悔しさで涙を流した。
「その被害者面、吐き気がするわ」
リデルはそう吐き捨てるように呟くと、ホワイトホールで炎を呼び出した。
前にブラックホールで火を消したことがあったのだろうか。
彼女の放った火はたちまち枯れた草原を焼き尽くし、火の海となった。
拘束されたユーリは起き上がることもできず、ただ目の前のリデルを睨みつけた。
そんなユーリをリデルは鼻で笑うと、その場を去っていった。
目の前の扉は再び固く閉じられようとしている。
扉の向こうには気を失っているローの姿が見え、ユーリは何度も彼を呼んだ。
しかし無情にも目の前の扉は閉められてしまい、取り残されたのはユーリただ1人だった。
「----っ!!!!」
ユーリは火に包まれた炎獄の中心で、言葉にならない悲鳴を上げた。
激しく燃え盛る炎は、彼女に容赦なく襲いかかったのだ。