• テキストサイズ

時の恋人【ONE PIECE】

第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医





すっかり荒れ果ててしまったこの大地で、二人は睨みあいを続けた。

「そうね、ここは大人しく引き下がったほうが賢明でしょうね。でも……」


私を甘く見ないで欲しいわ



「…っ!?」


リデルの手にはローの心臓が握られていた。
ローは驚き咄嗟に彼女へ攻撃を仕掛けるが間に合わなかった。


「がっ…!」


心臓を握られもがき苦しむローは何とか倒れずに立ち続けると、目の前の女に鋭い視線を向けた。
そんなローにユーリは前に出ようとするが、シャンブルズで離れた場所に移動させられてしまった。



「ロー……!!」


ユーリが次に見た映像は、リデルがローの頭に手を当て能力を発動している瞬間だった。


「貴様…なにをっ」

ローはその場に膝をつき、頭が割れるような頭痛に襲われた。
手で頭を掴み必死にその激痛に耐えるが、酷くなる一方だった。


「あなたが誰を愛していても、あなたが私のもとだという事実は変らないわ」

リデルは本気でローを愛していた。
生きている中で初めて人を愛した彼女は、その最愛の人からの裏切りに狂気の笑みを浮かべた。

「忘れなさい、何もかも。あなたが見ているのは、私だけでいいわ」

リデルの言葉にローは驚き目を見開いた。

彼女の意図が分かった瞬間、ローの目の前にはユーリとの数々の思い出が走馬灯のように過ぎていった。


ーーーやめろっ

ユーリとの思い出が1つ、また1つと色を失って消えていく

ーーーやめてくれ!!



ローは必至でユーリとの記憶をかき集めた。

しかしそれらはまるで、こぼれ落ちていく砂のようにサラサラと消えていった。



もう、愛した人の名前すら思い出せなかった。




彼女の放ったブラックホールは、ローの記憶を根こそぎ奪っていったのだ。





/ 576ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp