第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「…おまえ、腹が減ってるのか?」
白く、真っ白な世界。
まるで今から色塗りをするかのように、辺り一面白で覆われた世界だった。
ガリガリに痩せた少女にパンを差し出す彼もまた、真っ白だった。
渡されたパンをじっと見つめ、少しづつ口に運んでいく少女も真っ白だった。
ゴミ屋敷で過ごしていた少女は、気づけば彼に保護されていた。
一人でうずくまっている少女を彼は見つけてくれた。
辺りを不思議そうに見渡す少女の瞳だけは、美しいオレンジ色だった。
そんな少女の頭を優しく撫でる彼は、この先何度も少女を見つけて保護してくれた。
そういえば彼の名前はなんだったんだろう……
今となっては思い出すことは出来なかった。