第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは閉じられた扉を見て、暫くその場に立ち尽くしていた。
最後にローと目があったような気がするが、気のせいだろう。
そしてそんなユーリの様子を見ていた女性は、最後の別れを伝えて消えていった。
「……っ……ふ…」
ユーリの瞳からは大粒の涙が零れていった。
両手で何度もその涙を拭うが、まるで何かが壊れたように止まらなかった。
「うっ……うあぁぁぁぁぁ!」
そしてユーリは遂に耐えきれなくなり大声を出して泣いた。
本当は一年前からずっと声を上げて泣きたかった。
でもそんな資格はないと思いずっと我慢していたのだ。
「ひっ…く…うぅ!……嫌だ…っ……」
ユーリは漸く1人きりになれたので、弱音も涙も何もかも吐き出した。
今更そんなことしても何もかも遅いのに、言わずにはいられなかった。
ユーリは全て分かっていた。これからのことも、もうどうにもならないことも。
だけど、今だけは大声をあげて泣くのを許してほしかった。