第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「彼があなたの思い人なの?別の女がいたみたいだけど、片思いかしら?」
「ははっ、なんか拗れに拗れてこうなっちゃいました」
「そう、あなたも可哀想な人ね」
「……そういうあなたも可哀想な人では?」
「……そうね」
ユーリの言葉に表情を曇らせる彼女。
ロジャーがワンピースを手に入れた後、誰かがワンピースを手に入れたという話は聞かなかった。
だから彼女は、ロジャーのクルーなのだろう。
そしてロジャーが生きてこの場を出れたという事は、トキトキの能力者に愛されていたということだ。
「でも、彼は私を愛していたから。やっぱりあなたのほうが気の毒だわ」
ロジャーが愛した女はトキトキの能力者だった。
ロジャーもまたこの地へ辿り着き、認められた。
しかし彼は財宝を持って帰ることなしなかった。
どんな財宝よりも愛している女性を失ったロジャーはその後自ら死を選んだのだ。
海賊は海賊らしく、処刑台に乗って。
彼女を失った後も別の女性と結ばれたが、それでも彼の心の隙間を埋めることはできなかったのだろう。
ロジャーが最後に放った言葉の通り、彼の財宝の全てはこの地に置いてきた。
誰よりも愛していた……彼女という存在を。