第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「……ありがとう」
ユーリは右ではなく左手を差し出されたので、なんの嫌がらせだよとため息を吐いたが、最後の目的を果たせたのでとりあえず安堵した。
「……っ!?」
ふと視界にローの右手が映った。
そこには、捨てられたと思っていた虹色の紐が、袖から僅かに姿を見せていた。
「ごめん、私はちょっと彼女と話があるから、先に行っててもらえないかな?」
ユーリは手を放し後ろを振り向くと、震えそうになる声を必死に抑え、そう伝えた。
「はぁ?話って何を…」
ローは咄嗟に彼女の肩を掴もうとしたが、その手は虚しくも宙を舞った。
「というかこれで目的を果たしたから、もうお別れね。私は別のルートで帰るから、どうかお元気で」
ローの言葉を遮るように話すユーリ。
ローが何か言いたげに再び口を開こうとするが、ユーリはさっさと彼女の元へ向かってしまった。
「ねぇロー!早く行こうよ!」
「キャプテンー!置いていきますよー!」
ユーリが遠ざかっていくのをローは咄嗟に止めようとしたが、皆に邪魔された。
ローは胸騒ぎがしたが、クルー達にせかされたので、重い足取りで扉へ向かった。