第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは目の前にいるローをじっと見つめた。
こんなに近くにいるのも、こうやって触れてもらえるのも、これが最後だ。
ユーリはローを忘れない為にも、その姿を目に焼き付けていった。
「ありがとう」
ユーリはローから心臓を受け取ると、それを静かに祭壇の上に置いた。
そして大きく深呼吸をした。
脳裏に浮かぶのは初めてこの世界に来てから今までの思い出だった。
露出魔事件から始まり、ローとの接触に一喜一憂していた自分が懐かしい。
ルフィとのやり取りもしっかり見納めることができた。
ドレスローザでは奇跡が起きて、ロー自らドフラミンゴを倒すことができた。
至る所で自分が負傷している場面もチラついたが、今となっては笑い話だ。
ユーリは口元に笑みを浮かべると、静かに瞳を閉じた。
「ユニバース」
洞窟に響き渡った声は、震えることなくしっかりと響き渡っていった。
ユーリの唱えた禁忌の言葉は、前に一度だけ見た言葉だった。
それを唱えるように言われたわけではないが、無意識に彼女は、そう呟いていたのだった。