第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
次の日の朝
ユーリとローと複数のクルー達は、ワンピースを目指すべく準備をしていた。
クルーの中にはあのシェリーも入っており、ユーリはそっとため息を吐いた。
そしてそれぞれの準備が終わると、ユーリは刀を召喚し海へ向けて薙ぎ払った。
すると目の前の海が割れ、時空が歪み、道ができると、大きな扉が現れた。
周りのクルー達は驚いてざわついていたが、ユーリがさっさと歩みを進めると慌ててその後をついてきた。
扉を開けると広くて長い洞窟のような場所に出たので、皆でただひたすら歩き続けた。
洞窟なので背後からシェリーとローの会話が余計に響いて聞こえてきたが、なぜだろう、ユーリの心は昨日に比べて静かだった。
ユーリの人生はもう少しで終わる、そう思うとどうでもよくなったのかもしれない。
死ぬと決まったわけではないが、永遠ともいえる孤独を前に少しは動揺するかと思った。
しかしユーリの心はぽっかり穴が開いたように、何も感じなかった。
「……」
ふとローの持つ鬼哭が目に入った。そこにはユーリの渡した虹色の紐の姿はなかった。
(そうよね、流石に捨てるか)
分かっていたがユーリの心は深く沈んだ。
本当はどこか期待していた自分がいて、ユーリはそんな自分自身が嫌になった。
全ては自分が決めて招いたこと。
悲しむ権利は、ユーリになかった。