第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「……気に入らねェな」
「…っ!?がはっ!」
ユーリの視界が歪んだかと思うといつの間にかローの目の前に移動させられ、そのまま首を掴まれた。
30㎝ほどある身長差でユーリの身体は浮いてしまう。
締まる首に、ローの手を掴み外そうともがいていた。
「……げほっ」
ローの手は意外とすぐ外れた。
だが、そのまま顎を捕らわれユーリの腰に回された腕のせいか、まだ足が地面から浮いている状態だった。
ローはそんなユーリの様子を見て卑しい笑みを浮かべると、耳元へ唇を寄せた。
「また、あの時のように抱いてやろうか?」
囁かれた言葉は色気と冷たさが入り混じっていた。
目の前には冷たい笑みを浮かべているロー。
そして驚いた表情で目を見開くユーリ。
ローは咳き込んでいるユーリを気に留めることなく、噛みつくように口づけた。
「!!!」
ガリッ
ユーリは思わずローの唇を噛んだ。
そして僅かに出来た隙を狙いローから離れると能力を使って距離を取った。
ローは口を押えると、前方にいるユーリを睨みつけた。
「私たちの関係はもう終わりました。そういうことは今の恋人にしてください」
といっても、始まってすらなかったのだが。
ローが口を開く前にユーリは口早にそう伝えると、一瞬でその場から消え失せた。
ガンッ!
ローは近くの木を殴りつけると、そのままズルズルと座り込んだ。
「……何がしてェんだ、おれは…」
そう呟いた言葉はユーリに届くことはなかった。