第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
そして日付も変わるころ、ほとんどのクルー達は酔いつぶれ、宴はお開きになった。
ローとあの女性もいつの間にかいなくなっており、ユーリはため息を吐くとそっと船から降りた。
そして飲みすぎた為に気持ち悪くなり、ずっと吐きたいのを我慢していたユーリは草むらで吐いた。
本来ユーリは酒に強いほうなのだが、今日は無意識に飲んでいた為に自分の許容範囲を超えてしまったのだ。
そして近くの小川で口を濯ぐと、月明かりに照らされた水面に自分の顔が映った。
その顔はなんとも酷いものであり、先ほどの美女と比べると雲泥の差だとユーリは苦笑した。
「で、結局恋は実らなかったの?」
そして久しぶりに聞こえてきた妖精の声に、ユーリは泣きそうになった。
「馬鹿ね、泣くくらいなら……運命に抗いなさいよ」
「……そんな、簡単なものじゃないんです……てか泣いてないです」
ユーリは酷い顔を洗い流すように、小川の水を手に取り顔に浴びせた。
そんなユーリの様子を、妖精は周りをフワフワ漂いながら見ていた。
「今まで多くのトキトキの能力者を見てきたけど、ここまで拗れまくったラブストーリーは見たことないわよ」
「そうですね、私も漫画くらいしか見たことないです」
「漫画と現実は違うわ。やり直しがきかないの分かってるでしょ?」
「そうですね、でもこれ以上に良い方法が思いつかないんです」
「はぁ……本当に後悔はしてないの?」
「はい、後悔はしていません。後悔したら、駄目なんです」
ユーリの表情は悲痛なものだったが、その瞳にははっきりとした意思が見えた。